へぇ〜っとうなる、珍味の昔話です。
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1-1.
名古屋市の北東部に、天白川の水路が走っている。いまは、ビルや住宅にかこまれ、流れもよどんで昔日の面影はないが、奈良時代は木曽の雪どけ水を運ぶ、清流あふれる堂々たる河だった。
『万葉集』に、この河の情景をよんだ高市黒人の歌が残っている。

    桜田へ 鶴鳴きわたる 年魚市潟
         潮干にけらし 鶴鳴きわたる

「年魚市潟」というのは、当時の天白川河口附近の入りくんだ潟を指している。天白川の河口近辺は、アユやウグイが群れ遊んでいたのだろう。アユばかりでなく、いたるところに発達した入江や湾には、多彩な魚が棲みつき、浅瀬の砂地には貝類が繁殖していたにちがいない。「年魚市潟」は、結局、「愛知」という地名のもとになるわけであるが、”愛知”の由来は、アユが豊富にとれた土地という意味ではないだろうか。それを裏付けするように、平安時代には当地から京都に大量の「あゆの塩煮」、つまり「あゆのつくだ煮」が税金として送りこまれているし、江戸時代になると徳川家に「あゆの鮨」や「うるか」が献上されている。

また、「あゆち」の「あゆ」は、「あえ」の変形とみることもできる。
「あえ」は「饗」で、「もてなす」とか「ごちそう」、または「多くのひとが集まって宴会を開くこと」、「神に飲食物を供えること」などの意味になる。いずれにしても、飲食と密接な関係のあることを「愛知」という地名はものがたっている。「あゆ」にしろ「あえ」にしろ、土地の豊かさを表現したものである。
肥沃な平野のひろがる愛知県は、周辺地方の穀倉として古くから農業のさかんな地域であった。そして、天白川河口前面に展開する伊勢湾も、陸地におとらぬ豊かな海で、海産物の宝庫だった。
縄文時代 いまから一万年前から紀元前300年までの約8000年間をいう。
まだ、本格的な農耕文化はおこっていない遺跡から、さまざまな魚貝やけものの骨が出土している。名古屋市の瑞穂区に大曲輪貝塚があるが、土器にまじって、石鏃が多量に発掘されている。
石鏃は石の矢じりのことだから、名古屋周辺に住みついていた縄文人は、漁をする一方でハンティングにも精を出していたのである。縄文人の食料となった主な動物は、シカとイノシシを筆頭にウサギ、キツネ、サル、オオカミ、それに鳥類も入る。″古代愛知人″の食生活は、山海の美味珍味に恵ぐまれ、実に豊かだった。

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