へぇ〜っとうなる、珍味の昔話です。
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8-4.

「細工物珍味」の発達と名古屋の風土は、密接な関係がある。

名古屋は、東京と大阪というふたつの巨大消費都市の中間にあるため、珍味にしても商売しづらい面があった。
関東周辺はもちろん、東北の客も東京に吸収されてしまう。関西方面も同じことで、大阪どまり。名古屋まではやってこない。このため、名古屋の業者は宿命的に商品研究やセールスには、ひと一倍熱心にならざるをえなかった。
少々手間がかかっても、よそではやらない分野を開拓しなければ、企業の発展はのぞめない。そのような名古屋のもつ風土が、細工物珍味やこまかく包装するていねいな珍味品を育てたのである。
芸術的な細工物珍味は、戦前には神戸の中外物産、トキワヤ、大阪の朝日屋、岡野屋、はりまやなどがよく知られていた。名古屋地区では金城軒が早くから始めている。

終戦後は神戸の万国物産を始めとして草野商店、大阪の舟利食品、日珍(現在のニッチン)、朝日屋、岡野屋など関西の業者もさかんにつくっていた。金城軒でも昭和49年までは数多くの細工物珍味を創作している。

昭和20年に設立された三友商会では、才木久美、船坂吉郎も、お得意先からの″なにか変った珍味はないか″との注文に細工物のつまみの工夫に苦心をしている。

昭和33年に船坂吉郎は船坂商会を設立、研究熱心な船坂は、夜おそくまで、自分でいろいろ細工をこらし、試行錯誤をしながら開発を続けた。手のこんだものが多く、ほとんどのプロセスが手作業のために苦労も多かったが、味の芸術品ともいうべき「細工物珍味」を、続々と生み出していく。

昭和24、5年から45年ごろまでは、細工物は実によく売れた。しかし、ソフトサキイカが出廻るようになると手のこんだ細工物の人気は、しだいに下向線をたどるようになった。

きょくたんにいうと、ソフトサキイカは朝、冷蔵庫から原料を出すと、翌日には製品になってしまう。ところが「細工物」の場合「松葉」で三日、「結びもの」で5日はかかる。しかも、工程の大部分は手作り。生産がこのように非能率的なために、多くの企業はソフトサキイカなど他の製品にきりかえてしまった。船坂商会では受注生産システムで、現在でも製造している。
細工物の種類は、現在のところ30種くらいである。この″味の芸術品"は、お中元と歳暮にはなくてはならない色どりとなって、日本の食文化の中にすっかり定着した。
木目の細かい生産技術から生みだされる、花鳥風月の美を凝縮させた伝統的な細工物珍味は、日本人の洗練された美的センスが消え去らないかぎり、伝承されていくであろう。その繊細な製品にたいする愛情は、中部地区業者の商人気質と相関して、同地区業者のあらゆる製品のなかに生かされ、中部地区特有の新製品を生み出し、これからも数多く開発されていくであろう。


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